【2011年4月29日】
東京古書会館、下町書友会。
前回の下町書友会(新年最初の即売展)と、それに連続してのサンシャイン古本市では、いずれも佐藤藝古堂の棚から粋筆のいいところを幾冊か収穫して、それはちょっとしたお年玉だった。
そこで今日も、会場入口に貼り出された参加店の配置図を見て、まずは佐藤藝古堂を目指す。
場内に入ってすぐ左手の棚が割り当てられていたので、そこに眼玉を集中。
お年玉の追加を戴こうという魂胆だが、そのような欲張りは、あえなく肩透かしを喰らう。藝古堂からは収穫なし。
金木書店の棚。背表紙の文字が判読できない本が幾冊か並んでいて、それらをなかば惰性で引き抜くなかに『くりくり坊主』、著者は、あ、岩佐東一郎! 書物展望社だ。売価も手の届く2100円だ。
薄くて背表紙の無い小冊子や、汚れたり消えたりして背文字が読み取れない本は、とにかく1冊ずつ棚から引き抜いてみる。単純で面倒な作業だが、これこそが古本探しの基本かつ極意でもあるようだ。
と、得意げに私が語るまでもない。諸先輩の皆さんは、こちらでもあちらでも、抜いて戻してまた抜いて、黙々とその動作を繰り返している。昔も今も、おそらく未来も、繰り返すのだろう。
めげずに繰り返すうちにはこうして『くりくり坊主』と対面する。たまりません。
三崎堂書店の棚では珈琲雑誌『ブレンド』No.1(柴田書店)と遭遇。
遂にと言うのか、今頃になってと言うべきか、この『ブレンド』は昔、珈琲店のマスターに勧められて以来ずっと探しながら、とうとう見つからなかったマボロシの雑誌だ。
時は移り、今となってはどうしても欲しい1冊ではなくなってしまったけれど、それでも買うことにした。
あの頃の私に、やっと見つかったと報告したいようなセンチメンタルが少々と、しかも100円だと自慢したいような気分が少々。いずれにしても、ひとつ宿題が片付いたように、スッキリとはした。
ぶっくす丈の棚では鹿島孝二のユーモア小説集『豪傑の系図』(大都書房)200円。
それから田岡典夫『南国風土記』は、カバーの装画がやなせたかしだ。土佐を題材にした民俗学的な随筆と時代小説とを1冊にまとめた本のようである。中身を読むことはまずないだろう。
カバーだけ欲しかったのだが、カバーだけでは売ってくれないから、しばらく手の中で撫でさすって、棚に戻した。
その他、平野威馬雄『お化けの本』(広済堂ぶっくす)300円。
続いて高円寺に移動して、西部古書会館の西部展。
シャルル・フーリエ『四運動の理論』(現代思潮社)が上下2冊揃で1050円。このあいだ田村書店の店頭で上巻のみが400円だったから、2冊揃ってこの値段なら納得。
『駅弁の旅』クック編集部(千趣会)400円、『オプス・ピストルム』ヘンリー・ミラー(ロマン文庫)420円と合わせて購入。
どこの棚だったか、御老体が『PLAY BOY』の米国版(?)をしっかりと抱えておられて、その表情は掘出し物を探り当てたとでもいうように上気している。さらなる収穫を狙ったものか、ビニール袋に包装された雑誌に的を絞って引き抜いておられるのだが、次なるそれは『JUNON』であった。
つい、横から成り行きを見守ってしまったが、こういう先輩を私は敬愛せずにはいられない。
ネルケンで珈琲。
このあとはガード下の四文屋にするか、ささま書店にするか。
今日はささま書店にしよう。
月曜社『洲之内徹小説集成』、いつのまにかこんな本が刊行されていたのだな(2008年刊)、それから古賀春江『写実と空想』、どちらも売価は4200円で、残念だけれど気安くは買えない。
文芸書の棚には、下町書友会で見た『南国風土記』の著者、田岡典夫のまた別の本『(題失念)』、副題は覚えていて「文壇片隅四十年」。その帯を見ると、田岡典夫は直木賞作家とのこと。知らなかった。
何も知らない我が身の無知はいつものことだが『南国風土記』、つべこべ言わずに買っておけばよかったか。ここいらあたりが甘茶なんだ。
ヨゼフ・チャペックのエッセイ集『人造人間』(平凡社)735円、購入する。
【2023年3月追記】即売展の場内配置図など
古書会館の即売展では、1店舗につき5台前後の棚を受け持ちます。
各店舗が会場のどこに位置するのかは、いつも同じ場所に決まっていることもあれば、毎回変わる場合もあるようです。
会場の入口や書棚の側面には場内配置図が貼り出してあり、どのお店がどの場所にあるのかを示してあります。
目当てのお店があるときは、まず配置図を確認してから棚に向かいます。
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時間の許すかぎりということになりますが、背表紙の文字が読み取れない本、背表紙の無い薄い冊子、それらが棚に並んでいたら、地道にいちいち引き抜いてみると、時に面白いものにぶつかります。
岩佐東一郎については下記ご参照ください。
→【2010年3月19日/2022年12月追記】五反田遊古会から愛書会へ、岩佐東一郎『二十四時』
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田岡典夫【たおか・のりお、1908(明治41)-1982(昭和57)】は1943年に直木賞を受賞しています。
副題「文壇片隅四十年」を持つ著書の本題は『ととまじり』でした(平凡社/1981年)。
結局、この日以降も田岡典夫の本を買ったことはなく、つまり1冊も読んだことのないまま、現在に至ります。