【2011年7月28日/2023年4月追記】重たい本の購入をためらう

【2011年7月28日】
9時55分、新宿。
京王百貨店の入口へ行くと、結構な人数が開店を待っている。
みなさん古本なのかと思ったら、そういうわけではないようで、開店早々お菓子売り場へ直行する人もいるようだ。
7階に上がって、東西老舗大古書市。
朝一番から物凄く不機嫌な顔で漫画を漁っている女の人がいた。
辰巳ヨシヒロ『鳥葬』(小学館文庫)100円。
棚の下から吾妻ひでお『スクラップ学園』(秋田漫画文庫)全3巻。1巻2巻は持っているから、ほんとうは3巻だけ欲しいのだけれど、3冊315円だから買ってしまおう。
宇井無愁『接吻の履歴書』6300円、宇井無愁『見合列車』8400円。魅力的だがこの値段ではどうにもならず、冷やかすだけの宇井無愁。
京都国立博物館の『曽我蕭白展』図録が4000円。ちょっと迷う。
目録などでは7、8000円が付いていたような覚えがある図録だから買い得だとは思うのだが、ただ、この立派な図録はたいへん重たい。見送る。
山本千代喜『酒の書物』が函付で2100円なら手頃じゃないか。
しかしこの書物もたいへん持ち重りのする1冊で、今まで、何度か手にとったことはあるが、いつも手にとった瞬間の重量に気圧されてしまう。今日も見送る。
伊藤逸平編著『日本の漫画家』(産業経済新聞社)は軽いので購入。1000円。
買うか買わないか、その本の重量だけで判断するのは何か根本的に間違っているのじゃないか?
その他、『古本屋群雄伝』青木正美(ちくま文庫)525円。
会場係の人に今回のポスターを頒けてもらえるか訊いてみたら、差し上げますと言って、奥から1枚持ってきてくれた。
京王古書市恒例の猫と古本のポスター。うれしいオマケとなった。
屋上の灰皿で一服ふかして帰途に就く。

伊藤逸平編著「日本の漫画家」表紙
『日本の漫画家』伊藤逸平編著(産業経済新聞社/1956)
青木正美「古本屋群雄伝」表紙
『古本屋群雄伝』青木正美(ちくま文庫/2008)

【2023年4月追記】重たい本
本の重量を基準にして購入か否かを決めるのは、やはり間違っていると思います。
床の上に足の踏み場がなくなり、積み上げた本が自分の背丈を超えるようになってくると、しかしそう言ってばかりもいられません。
書物とは、中身よりもまず「物体」なのだという現実が、大きくのしかかってきます。
物体は、その形状に応じて空間を占有します。
重たい本というものは、それ相応に大判で、また分厚い本です。
重たい本を買うのが、だんだん恐ろしくなってきます。
内容の如何に関わらず、その造本が頑丈で立派になればなるほど、購入に至るまでには多大の決心を要します。
ある程度の蔵書を抱えるようになると、それは誰しも共通の心理になるのかもしれません。
〈重たい本・大きい本=売れない本〉という図式さえ成り立つようです。
その本の商品としての価値は、重さや大きさとは比例しません。
敷石みたいな美術全集が数百円で放出されるという具合に、古書の値段が端的に証明してくれます。

〈関連日記〉
京王百貨店の古書市
【2010年7月30日/2023年1月追記】東京古書会館のがらくた市から京王百貨店の東西老舗大古書市へ