【2012年10月1日】
夜半に台風は過ぎ、朝の空はマッサオ。
10時、穴八幡宮境内の早稲田青空古本祭。
まさに青空古本祭の呼び名にふさわしい空のもと、しかしひとたび古本に取りつけば空の色は忘れる。
あまとりあ社の新書判『珍説風俗ばなし』狭山温(あまとりあ社/昭和31)300円。帰宅後、この本は2冊目の購入であったことが判明。
古澤岩美の随筆集『月と黒子』(リーチ/昭和37)はオリジナル・エッチング一葉と、裸婦その他の挿絵が豊富。1200円。
『玉饌ふぐを語る』(東京ふぐ料理連盟/昭和25)500円。「ふぐ巷談二百余家」と題されたアンケートは、伊馬春部、猪熊弦一郎、徳川夢声、小野佐世男、細木原青起、中勘助、野尻抱影、麻生豊、城左門、北町一郎、摂津茂和、等々々、賑やかな顔ぶれだ。
以上3冊購入。会計の際に早稲田古書店街一割引券をオマケに貰ったのだが、何軒か覗いてみたものの有効に使えなかった。
西早稲田駅から地下鉄に乗って渋谷へ行き、文化村で〈レーピン展〉を観る。
イリヤ・レーピン、1844-1930。その絵を初めて見る画家。ゴーゴリの狂気を描いた《ゴーゴリの「自殺」》は凄まじい迫力だった。
画家の著書『ヴォルガの舟ひき』には邦訳もあるそうだ。探してみるか。
午後3時、高円寺ガード下の四文屋に落ち着いて『玉饌ふぐを語る』をめくる。
アンケートのページ、ふぐに就いての作品はありますか、という問いに北町一郎「特になし、そのうちにユーモア小説に扱ってみたいものです」と回答している。
その後、ふぐ小説は執筆されたのだろうか?
【2024年11月追記】
現在、早稲田界隈での古本まつりはありません。
穴八幡、早稲田大学、高田馬場BIGBOX。賑わっていた一時期もありましたが……。
と、過去を懐かしがってばかりいても仕方ありませんから、ふたたび早稲田の地に古本まつりが戻ってくる日を期待しましょう。
早稲田古書店街のご店主の皆々様、どうぞ宜しくお願い致します。
青空古本祭につきましては下記ご参照ください。
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『ヴォルガの舟ひき』イリヤー・レーピン/松下裕訳は、中央公論社より1986年に刊行されています。
1991年には中公文庫にも収録されました。
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食べたくなっても気安く味わえないのがふぐの難点ですが、ふぐの本ならワンコインで手に入ることもあります。
ふぐ文献がこの世にどれくらい存在するのか見当もつきませんけれど、古本の海の中には結構なふぐの群れが優雅に泳ぎまわっているようです。
カラーブックスの『ふぐ大学』北濱喜一(保育社/1984)などは珍種と言えるでしょう。