【2012年11月19日】
ふらあっと聖蹟桜ヶ丘をさまよう。
撤退したと思っていたブックオフは、いつのまにか駅前のビルに移転していた。以前より便利になった。ブックオフ聖蹟桜ヶ丘オーパ店。
新書判の均一棚で白水Uブックスの『セルフ・ヘルプ』ローリー・ムーア(1994)と『食べ放題』ロビン・ヘムリー(1993)、どちらも元版は1989年刊行の白水社〈新しいアメリカの小説〉という叢書の一巻。
文庫均一に移って『酒呑まれ』大竹聡(ちくま文庫/2011)。作者五十音順「わ」の次には官能小説がさりげなく身を寄せているのだが、そのあけすけな隠し砦から『ただいま執筆中!』紅くりす(フランス書院ナポレオン文庫/1995)、主人公は女子高生のポルノ作家ということらしい。
ライトノベルの棚では〈本〉をキーワードにうろうろ。有り合わせの感興に身を任せつつ――
『図書館迷宮と断章の姫君』おかざき登(MF文庫/2010)
『ライトノベルの楽しい書き方』4、本田透(GA文庫/2009)
『ラ・のべつまくなし』1と2、壱月龍一(小学館ガガガ文庫/2009・2010)
『ライトノベルの神さま』佐々之青々(集英社スーパーダッシュ文庫/2010)
ここにある、ここにもあると拾い集めれば、しかしこれは案外と癖になる。
平凡社ライブラリー『カルダーノ自伝』ジェローラモ・カルダーノ(1995)、『黒部渓谷』冠松次郎(1996)。以上、ここまでの11冊はすべて1冊105円。平凡社ライブラリーが均一棚に並ぶとは、なかなか豪快に放出してくれる。
美術書の棚で『山名文夫 AYAO YAMANA,1897-1980』(トランスアート/2004)1250円。雑誌『広告界』などに寄稿した文章の集成で、抄録もいくつかあるようだが、山名文夫の文章をまとめて読める本は貴重かもしれない。古い本となるとこのあいだ神保町で『Yamana-Ayao装画集』が6万3000円だったし、まんだらけでは『カフェ・バア・喫茶店広告図案集』に10万円近くの値が付いていた。このあたりは絶望的だ。
会計、2615円。お店を出たあとでレシートを見てみると、11冊だったはずの105円の点数が13点計上されている。その場で気づけば面倒はなかったものを、珍しくブックオフで買い込んだものだから舞い上がっていたのかもしれない。どうしよう。
マボロシの2冊を210円で買ったのだと、一旦は自分を言いくるめようと試みたのだが、やっぱり210円は大事だ。
レジに戻って先程の店員さんに確認を願う。ずいぶんあわてた様子で、いちど返品の手続きをしてから改めて会計します、と言う。機械の支配する世界は何かとややこしい。それでまずは返金という段になると1000円足りなかったりして店員さんのあたふたは倍加するし、そのあたふたがたちまち伝染するのは私の弱点だ。改めて会計した結果、告げられた金額は945円。ちょ、ちょっと。あ、あ、そうか。それ、その、山名文夫が……。
そんなときに限って後ろにお客さんが並ぶ。めげずに会計操作に挑む店員さんの手つきを祈るように見つめながら、105円11点に1250円1点の計2405円。ようやく値札どおりの会計を終えて、どっと汗。
つづいてブックセンターいとう桜ケ丘店へ。
2階の文庫売場から新橋遊吉の競馬小説『男が賭ける』(角川文庫/昭和59)150円。
3階に上がって児童書の一角、こどものともを詰め込んだ籠より『とらのゆめ』タイガー立石(福音館書店/昭和59)、附録の月報は欠けているが100円はうれしい。
美術書の棚では『ヴォルガの舟ひき』イリヤー・レーピン(中央公論社/昭和61)と遭遇する、450円。このあいだレーピン展を見てから探し始めた本だけれど、遭遇と言っても、もしかしたらもう何年もずっとここに並んでいたのかもしれず、今まではただ見えていなかっただけなのかもしれない。
【2025年4月追記】聖蹟桜ヶ丘のブックオフとブックセンターいとう
「ブックオフ聖蹟桜ヶ丘オーパ店」は駅南側のショッピングモール、オーパの6階にあります。
西口駅前から連絡橋でつながっていますので、探訪には便利です。
以前は駅から少し離れた所、京王線の線路と並行する川崎街道を高幡不動に向かって4、500メートルほど進んだ道路沿いに「聖蹟桜ヶ丘店」がありました。
初代の店舗は2011年9月に閉店し、翌10月に現在のオーパ店が新規開店しています。
開店時はたしかPLUS店舗だったように覚えていますが、いつのまにかPLUSが外れて普通のブックオフになっていました。また当初はオーパ4階での営業していましたが、これもいつのまにか6階に移転。いつのまにかと言っても自分が知らなかっただけで、お店が忽然と瞬間移動したわけではありません。
引越しが頻繁な聖蹟桜ヶ丘のブックオフですが、大元のオーパが2025年8月31日をもって営業終了となることが発表されています。
館内で営業している各店は一部店舗を除き閉店となり、9月からは新会社に運営が引き継がれるそうです。
ブックオフが一部店舗のなかに含まれるのかどうか動向が気になるところです。
◇
「ブックセンターいとう桜ヶ丘店」は2014年2月16日に閉店しています。
3階建ての大きな店舗でしたから、閉店後のしばらくは、京王線に乗って聖蹟桜ヶ丘駅を通り過ぎるたびに、窓の向こうの宙空にぽっかり大きな穴が開いているように思えてなりませんでした。
〈関連日記〉
*ブックセンターいとうについては以下の追記欄をご参照ください。
→【2012年6月4日/2024年1月追記】京王線、分倍河原から府中へ