【2012年2月11日】
西部古書会館、大均一祭。初日の今日は200円均一。
ガレージで、木原孝一『現代詩創作講座』を取り、室内会場が開くまでのあいだ、道端でぱらぱらとめくる。
そこへ犬を散歩させる御婦人が通り掛かり、その柴犬がはたと立ち止まってこちらをじっと見つめる。
まんまるの、潤むような黒い眼。
しゃがんでみると、犬はわッと躍るようにして私の顔を舐める。くすぐったい。
それでどうなったかと言うと、なぜだか『現代詩創作講座』は読み終えてしまったように思えたので、元の場所に戻した。
10時、室内が開場し、赤堀峯吉『即席酒の肴』、元値1000円の値札に絆されて『亜麻百年』、河出新書『女体の美学』(河出新書写真篇/昭和30)、早稲田古書店街の連合目録『古本共和国』第19号(2004)――巻頭の特集記事は「早稲田古書店街即売展史②BIGBOX古書感謝市」――、以上の4冊を選び、やっぱり『亜麻』は必要ないようなので返却し、『酒の肴』も返却する。
徒歩で中野ブロードウェイ。
4階のまんだらけで『快楽亭ブラック集』明治探偵冒険小説集2(ちくま文庫/2005)630円。
戦前の新潮文庫、牧逸馬『海のない港』(新潮文庫/昭和13)525円。
4階のまた別の店舗、絵本や児童書を揃えていた小部屋は、いつのまにか人形の部屋に改装されていた。あの大量の『こどものとも』はどこへ行ったのだろう。
【2023年8月追記】早稲田古書店街連合目録『古本共和国』
連合目録『古本共和国』は、「早稲田青空古本祭」に合わせて発行された古書目録です。
青空古本祭の会場は穴八幡宮境内、毎年10月の恒例行事でした(2013年の第28回をもって終了)。
1986年初開催に際しての第1号は『早稲田古書店街連合目録』として発行。第3号からは誌名を『古本共和国』と改め、表紙には、漫画家永島慎二氏の版画を用いて装いを一新します。
ペニー・ファージング型自転車と言うのだそうですが、前輪の大きい昔の自転車に乗って、颯爽と街を走る女性の図です。荷台にはもちろん古本が載っています。
第3号の表紙を飾ったその永島氏の版画は、早稲田古書店街のレジ袋の意匠にも採り入れられ、早稲田古書店街が主催する古本まつりなどではお馴染みの備品となります。
この自転車図の特製レジ袋はどうしても捨てることが出来ず、過去にもらった袋は、今でもすべて(どこかに)保存してあります。
さて、その後も毎年の発行を続けた『古本共和国』ですが、全部で何冊になるのか把握できておりません。
上述のとおり、青空古本祭は2013年の第28回が最後の開催でしたから、単純に当てはめれば第28号までは発行されたことになります。
私が初めて青空古本祭を訪れたのは2010年なのですが、しかし当時、会場で『古本共和国』最新号を見かけた覚えはなく、すでに目録発行は終了していたのではないかとも思われます。
〈日本の古本屋〉の通販ページで『古本共和国』を検索してみたところ、1号から20号までの一括出品が見られましたので、第20号(2005)までは間違いなく存在するようです。
千代田区立千代田図書館は古書販売目録のコレクションがある日本で唯一の図書館なのですが、『古本共和国』の蔵書は第6号(1991)の1冊のみでした。
また国会図書館には第10号(1995)の1冊。
果たして第21号は存在するのかどうか……。
雑誌一般は押しなべてそうなのですけれど、創刊号はよく目立ちますから掌握しやすい一方で、終刊号となると何だか曖昧で時期を特定するのはなかなか厄介です。
ましてや古書目録は、用済みになったら廃棄されるという宿命を、雑誌以上に背負っていると言えます。刊行の終わった目録は、いよいよ全体像がかすみます。
しかし全てが消え果ててしまうのかと言うとそんなことはなく、廉価品の古い雑誌の束に混じって、昔の古書目録が並んでいることは珍しくありません。結構しぶとく、時間の奔流を掻いくぐります。
200円とか300円とかで昔の目録を買い求めて、もちろん昔の目録に注文することは出来ませんけれど、こんな本があるのか、この本にこの値段が付くのか、など、往時の古本販売の状況を辿ってゆくのは面白くて、時の経つのを忘れます。
話が横道にそれましたが、大均一祭で購入した『古本共和国』第19号を、最後にめくってみます。
表紙には、永島慎二氏の作品「旅人くん」からのイラストを使用。
19ページにわたる特集「早稲田古書店街即売展史②BIGBOX古書感謝市」はインタビュー記事で構成されており、感謝市開催への経緯や会場の様子など、参加店の店主さんの貴重な話を伺えます。
岡崎武志氏のマンガあり!
巻頭には早稲田青空古本祭会場風景の口絵写真も載っています。
特集ページは縦書きの右開きですが、目録ページは横書きの左開きで、反対側の裏表紙が表紙になります。
総勢29店舗が参加し、計102ページ出品点数4000点以上と、見応えのある目録です。
当初の『古本共和国』はB5判だったそうなのですが、第19号はひとまわり小さいA5判です。
定価100円(税込)。古書目録は無料配布も多く見られますが、この内容であれば100円はむしろ安いくらいです。
特集記事は、全巻まとめて、ぜひ通読したいところであります。
どこかでまた、『古本共和国』のバックナンバーとひょっこり巡り合える日を、たのしみに待つことに致しましょう。
(参考*『東京古書組合百年史』東京都古書籍商業協同組合/2021)
〈関連日記〉
早稲田青空古本祭につきましては下記ご参照ください。
→【2011年10月3日/2023年5月追記】穴八幡宮の早稲田青空古本祭