【2012年3月9日/2023年9月追記】城南展、古本浪漫洲、地震から1年

【2012年3月9日】
東京古書会館、城南展。
キヌタ文庫の棚にて小林栄一郎『本の革の話』(小林栄商事/昭和44)1500円。
今迄にも即売展や都丸支店で何度か見かけている本で、そのたびに気にはなっていたのだが、値段との折り合いがつかずに見送っていた。1500円なら嬉しいし、今日は著者の挨拶状もオマケに附いていた。

小林栄一郎「本の革の話」表紙
『本の革の話』小林栄一郎(小林栄商事/昭和44)

ぶっくす丈の棚には秋田實『私は漫才作者』(文藝春秋/昭和50)が出現して800円。こちらもいつかは入手したいと思いながら、2000円、3000円の売価に静観をつづけていた1冊。
同じくぶっくす丈の棚で手にとった『おお!ストリップ』橋本与志夫(スポーツニッポン新聞社出版局/昭和50)には山本書店の値札が貼ってあったから、誰かが心変わりしてここで手放したのだろう。525円。

橋本与志夫「おお!ストリップ」表紙
『おお!ストリップ』橋本与志夫
(スポーツニッポン新聞社出版局/昭和50)

立石書店で河出文庫版『せどり男爵数奇譚』梶山季之(河出文庫/昭和58)150円。
再度のキヌタ文庫で『海老原喜之助』大沢健一(日動出版/1990)1000円。
先日、十返肇『文壇放浪記』を読んでいて三木蒐一(先月買ったユーモア小説『地下鉄伸公』の著者)が十返肇の義兄であることを知ったのだが、その三木蒐一の読切大衆小説『黒髪の幸福』を青梅多摩書房が出品しており8000円、興味は湧くがさすがに手が出せない。

大沢健一「海老原喜之助」表紙
『海老原喜之助』大沢健一(日動出版/1990)

先週今週と、金曜日の神保町は雨降りだ。田村書店の店頭もオアズケだ。
小宮山書店ガレージセールをザッと眺めて新宿に移動する。
サブナードの古本浪漫洲、第4節。
今日からはまた担当書店が入れ替わり、府中から参加の夢の絵本堂より『爆発星雲の伝説』ブライアン・W・オールディス(ハヤカワ文庫/昭和54)500円。

日にちこそ違うけれども昨年の3月第2金曜日。東京会館の城南展を見終わって、今日と同じように次はサブナードの古本浪漫洲に行く予定で、その前に神田古書センターの店頭棚を眺めているさなか、地震に遭遇したのだった。
何事も異変が起こらず、そこに古本が在る。古本と対面する私が在る。
ごくありきたりということの、これはやっぱり、有難い。
大袈裟かもしれないけれど、奇蹟、と言いたくもなるような平凡な日常なのである。何が夢で何がうつつかは判らぬが、与えられたこのわずかな時間、今ここに在る古本の裡へと、夢もうつつもすべて傾ける。
高円寺、ガード下四文屋。1杯200円の焼酎梅割りの、これもやっぱり、奇蹟、なのでは?
次週、五反田遊古会の目録をめくる。
月の輪書林のページ、目録用の数行を割いて、天誠書林和久田誠男氏が2月15日に逝去されたことを知らせている。
田村治芳氏が亡くなって、その追悼文を本の散歩展目録に綴った和久田氏。来月の散歩展目録には、どなたか、和久田氏の追悼文を寄せるのだろうか。

「五反田遊古会」第95回目録表紙
『五反田遊古会』古書販売目録/第95回

【2023年9月追記】
そこに古本屋があって、古本がある。
古本屋なんだから古本があるのは当たり前。
古本を買ったり買わなかったり。
欲しいと思えば買うし、欲しくないもしくはお金が足りなければ買わない。これも当たり前。
東日本大震災が起こって、その当たり前の営み、何事もない凡庸な毎日こそがいかに有難いものであったかということを、思い知らされました。
それはまた、ここ数年のコロナ禍でも、同じように痛感されます。
どうかするとすぐに忘れて浮かれてしまいますけれど……。
この日の日記の1年前、2011年3月11日は東京古書会館で城南展が開催され、私も神保町におりました。当日の神保町の様子などは下記ご参照ください。

〈参照日記〉
東日本大震災当日の神保町
【2011年3月11日/2023年3月追記】3・11 神保町