【2012年5月6日/2023年12月追記】神奈川古書会館と白楽周辺の古本屋

【2012年5月6日】
神奈川古書会館、反町古書会館展。
漫画漫文『世相百態』近藤りきを編(国民教育研究会/昭和15/11版)手にとると、執筆陣は、一平、比左良、青起、爾保布、千帆、邦坊などなど盛り沢山、漫画漫文の幕の内弁当みたいな1冊だ。
しかも、「娘ざかり」「頓智杢太郎」「漫画風流」「化の皮」「酒の虫」以上5篇は、磯部甲陽堂刊の漫画双紙がそっくりそのまま収録されているのではないだろうか。豪儀な書物があったものだ。
編者の近藤りきをは初めて目にする名前。発行所の国民教育研究会という名称は、漫画漫文にはそぐわない印象を受けるが、どのようないきさつで出版されたのだろう。
値札を貼り忘れていて価格が不明だが、函の裏に1000と鉛筆で書いてあるから、たぶん1000円なのだろう。
小冊子や紙物が入った小箱をごそごそやると、一昨日城北展で買って友人に進呈した『無病長生術』が出てきた。
ただ体裁や編集が城北展のものとは異なっており、先日のそれは大正11年10版(初版大正8年)と記されていたが、こちらは大正13年と後発ながら、再版や重版の表記はない。さしずめ新装版といったところだろうか。発行所も、先日は神宮館書店、今日は神宮館出版部と、微妙に異なる。
価格は同じく300円。出てくるときには出てくるものだ。
松川二郎『全国花街めぐり』、傷み有りで裸本でも、4000円は結構な特価だと思う。たまに目録に登場すれば1万円を超えることもある。けれどまあ、今回は見送る。
さて、帳場で『世相百態』の値段を尋ねると、出品元のアンデス書房の御主人は不在らしい。
函に1000と書かれていることを伝えてみても、ううん、と頭をひねっている。
しばらく中身を見分していた年配の御主人が「500円でどうでしょう」と仰有る。
それはもちろん安いほうがうれしいけれど、ちょっと申し訳ないようでもある。
しかしアンデス書房と云えば、このあいだの五反田遊古会で『アメリカの横ッ腹』1万円を奮発したお店であるし、その余得だと思うことにして、有難く提案に従った。

近藤りきを編「世相百態」表紙
『世相百態』近藤りきを編
(国民教育研究会/昭和15/11版)
帝国医学会「無病長生術」表紙
『無病長生術』帝国医学会
(神宮館出版部/大正13)

セブンイレブンで角ハイ缶など仕入れて、飲みながら、ぶらぶらと白楽に向かって歩く。青嵐、吹き抜ける。
野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』には、白楽界隈に4軒の記載がある。
このあいだは川越で全滅したばかりだが、どうだろう。
バス通りを進むと行く手に古本が見えた。六角橋バス停の正面に高石書店。
布に覆われた大きな本の山があって、その下に何があるのか、たいへん気になる。
『遠くにありて』山内義雄(講談社文芸文庫/1995)520円、購入する。

横道に入って相原書店。閉まっていた。
看板は健在で、まだ現役の色つやを保っているから、今日はオヤスミなのだろう。
バス通りに戻り、少し進んだ先を左に曲がって小山書店。
営業しているのだが、ひっそりと静まり返っている。
コンクリートの土間と、いつからそこに並んでいるのだろう、歳月の埃をかぶった本。
奥の棚には、時代に逆らっているような風情で詩集が並んでいる。
もうこれだけでここまで来た甲斐があった。
福島慶子随筆集『生活読本』(創元社/昭和28)300円、購入する。
帳場を預かる老婦人は、布切れで表紙を拭きとりながら、「伊勢佐木町の有隣堂で古本市をやっています」と教えてくださった。

福島慶子随筆集「生活読本」表紙
『生活読本』福島慶子(創元社/昭和28)

六角橋から白楽駅に向かって進めば鉄塔書院。
ここで買わなければどうすると言うような、豊かな蔵書と行き届いた分類。硬軟自在。
しかし何も買えなかった。眼玉を洗っていつか出直そう。
六角橋商店街の昭和迷宮のようなアーケード。精肉店のとなりに看板のない古本屋があって、あまとりあ社の新書判がずらずらッと並んでいて、裏表紙をめくっても値段が記していないので店主に尋ねたら、ここは新刊書店だった。大河内常平『不思議な巷』、朝山蜻一『白昼艶夢』、楠田匡介『人肉の詩集』を、まんまと新刊当時の定価で獲得する。……という妄想に耽りつつ、東急電車で帰途に就く。

【2023年12月追記】白楽駅周辺の古本屋その後
六角橋バス停前の「高石書店」。
その後、2019年4月に訪れた際には〈しばらくの間お休み致します〉の貼紙がありました。
以来、再訪の機を得られず、〈しばらく〉が、どれくらいのしばらくだったのか、のちに再開となったのかどうか、現況について詳しいところが判りません。。
古書組合のサイト「日本の古本屋」(→「古本屋を探す」)には登録されていますが、営業時間などの書店情報が空欄になっていて詳細不明です。
グーグルマップにも表示されるのですが……。
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この日は休業日にあたってしまった「相原書店」は、現在も営業しています。
2019年4月、上記高石書店と同じ日に初探訪を果たしました。
神奈川大学の教科書がたくさん並んでいたことを思い出します。
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「小山書店」は閉店となってしまったようです。
現地に赴いて確かめたわけではないのですが、現在、「日本の古本屋」には登録されておらず、またグーグルマップにも表示されません。
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鉄塔書院、正しくは「鐵塔書院」なのですが、今年(2023年)7月31日で閉店していました!
迂闊にも、今の今まで、まったく知りませんでした。
但し、店舗閉店後も、在庫品の店頭販売を行なっているそうです。
営業は不定期ですが、店内を開放する日もあるそうです。
「古書鐵塔書院」ツイッター(現X)に営業日のお知らせが載っています。
在庫処分販売がいつ頃まで続くのかは未定のようですが、新しい予定が決まり次第、ツイッターにて案内があるそうです。
最新の案内では12月2日(土)~4日(月)が店内開放予定となっています。
鐵塔書院で古本を買える機会もあとわずか。お近くの方は是非!
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2015年、白楽に新しい古本屋さんが開店しました。
「Tweed Books(ツイードブックス)」です。
白楽駅を降りて右手、六角橋とは反対の方向に3分ほど歩くと店舗があります。
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古本ではありませんが、六角橋商店街には新刊の「白楽六角橋書店」が健在です。
申すまでもありませんが、日記のなかで私が妄想していた新刊書店とは全く別の、きちんとした町の本屋さんです。
車道側とアーケード側にそれぞれ出入口があります。
殊に、異世界的なアーケードに面した書店風景は一見の価値があります。
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神奈川古書会館の即売展につきましては下記ご参照ください。