【2012年6月22日】
東京古書会館、書窓展。
あきつ書店、松尾邦之助『わが毒舌』300円、次に、高田保『人魂黄表紙』(原始社/昭和2)函欠の裸本ながら1500円。『人魂黄表紙』は以前、町田の高原書店で裸本4000円、南部会館の五反田展で函付5000円というところを目撃している。函は無くても1500円ならうれしい。眼が醒めた。
いつもならもうしばらくはあきつ書店で粘るのだが、今日は趣向を変えて他の棚を先ず一巡する。
廉価本の放出で侮れないのが、みはる書房。しかし眼に飛びこんだのは『珍々間語』瀬戸半眠(至誠堂書店/大正2年再版、初版は明治43)、4500円。
このあいだの和洋会で、やはりみはる書房から買った『滑稽お茶一ぱい』と似たような気配がある。半眠、という号がまた琴線に触れる。購入決意。
石黒書店の棚では『別府と文学』小野茂樹(藤井書房/昭和38)が1000円。先月の五反田遊古会にも、この本を石黒書店は出品していたのだが、このあいだは2000円だった価格が今日は半値の1000円。売れ残ったので値下げをした模様。有難く頂戴することにする。発行所の藤井書房は大分の古本屋。現在の吉祥寺の藤井書店の前身だ。
かわほり堂でのこの頃の御馴染みは水島爾保布『痴語』なのだが、こちらは値下げの断行とは参らず、このあいだも今日も、じっと眺めるだけの1万5000円。
けやき書店で通叢書『天麩羅通』野村雄次郎(四六書院/昭和5)1000円。
ここであきつ書店に戻って小島政二郎の仙花紙本『恋の海峡』300円。
ふたたびのみはる書房で今度は廉価品、『洋食のこつ』茂出木心護(文化出版局/昭和46/2刷)200円。
小林書店の和本の山から『新撰家具雛形』泉幸次郎(精華堂書店/明治42/再版)1000円。衝立や吊り棚の図集で、これも画譜の一種と言えるだろうか。それを買ってどうするという1冊なんだが、和本に親しむ唯一の手掛かりだ。
あきつ書店に遡上、節約のつもりで『わが毒舌』と『恋の海峡』を手放す。そうしたら『木歩文集』富田木歩(素人社書屋/昭和9)を見つけてしまう、2800円。
1階の受付にて次々週西部展の目録をもらう。
古書店街。雨は上がったようだが、店頭の均一棚はほとんどのお店が中止のまま。五反田に直行する。
南部古書会館、五反田古書展。
午後1時を過ぎて、会場の人波も引いている。
1階で『続・風流諸国ばなし』狭山温(あまとりあ社/昭和30)と、平台の下に潜りこんで『横浜ステンショ』小田貞夫(有隣堂/昭和50/3刷)、各200円。
事前の目録では、宇井無愁『パチンコ人生』2000円、『本の手帖別冊/森谷均追悼文集』1000円、生方敏郎『食後談笑』2000円など、幾冊か気になる出品があったのだけれど、今回は会場での遭遇に専念することにした。
その中でぎりぎりまで思案したのは中村宏画集『望遠鏡からの告示』3500円。
2階への階段を上りながら、さて、会場にあるだろうかないだろうか……潔く注文してしまえば無駄な感情を費やすこともなかっただろうに……と思うことは思うのだが、物慾と懐具合とのこの駆け引きも、古本行脚の愉快なのだろうか?
2階に上がって、先ずは目録出品元の遠藤書店の棚へ。ありました!
『望遠鏡からの告示』中村宏画集(現代思潮社/昭和43)3500円。
書物とのささやかな邂逅に、私のすべては激励される。されてしまう。
その他の『パチンコ人生』『本の手帖別冊』『食後談笑』は注文ありだったようで、会場には見当たらなかった。
黒沢書店の棚には春陽文庫がまとめて置いてあり、中野実も数冊。しかし中野実は著書の総数が多過ぎて、どこから取り掛かればよいのか、未だに迷う。
2階での購入は『望遠鏡からの告示』のみに終わったが、これ1冊で満タンと言えるような買物だった。
帰り道、西部展の目録をめくると『ポルの王子さま』5000円。ふむ。
【2024年2月追記】参加店消息
会によって異なりますが、即売展に参加する古本屋さんの数は、おおよそ15店舗前後です。
盤石不動と云った感じで参加店が一定している会もありますし、毎回変化が見られるような出入りの頻繁な会もあります。
間を置いて参加したり、1回おきに参加したり、参加の仕方もお店によっていろいろです。
目録のみ出品、反対に会場販売のみ参加、というお店もあります。
閉店に伴う退会があり、開店による新規参入があります。
今回をもって退会します、と挨拶を残して去ってゆくお店、気がつくといつのまにか見かけなくなっていたお店。
古くから参加を続けていた老舗が退会するのは淋しいものですが、これも時代の流れです。
初参加のお店の名を見るときは、どのような古本と共に登場して下さるのか、胸が躍ります。
即売展参加店の動向を把握するのは難しいのですけれど、この日の日記に記したお店について、分かる範囲で書きとめておきます。
書窓展の「みはる書房」は古典芸能が専門です。即売展の会場では、専門以外の雑本も数多く放出され、何が飛び出してくるか、いつも愉しみな棚でした。
2020年12月を最後に、2021年以降は参加が見られません。
2020年春からのコロナ禍のもとで、古書会館の即売展も目録販売のみを行ない、会場開催の中止を余儀なくされる時期が続きましたが、おそらくその影響を受けたのではないかと思われます。残念です。
「あきつ書店」「石黒書店」「かわほり堂」「けやき書店」「小林書店」は現在も参加を続けています。
五反田古書展にかぎらず、南部古書会館の即売展(五反田遊古会、本の散歩展、五反田古書展)は、参加店の入れ替わりが目まぐるしいです。
毎回、出入り自由というような状況です。南部会館の気風であるのかもしれません。
「遠藤書店」は言わずと知れた経堂の名店です。J・J氏こと、植草甚一氏が御常連だったことでも有名です。
2019年4月末、惜しまれながら閉店となりました。五反田古書展への参加は2018年12月の第160回が最後でした。閉店と時期を同じくして、2019年6月の第161回からは参加していません。
話は少しそれますが、遠藤書店が閉店した翌年、2020年の10月には「大河堂書店」が店舗閉店。経堂の地から古本屋さんが無くなってしまったのですが、およそ2年の空白期を経て、2022年9月に「ゆうらん古書店」が開店。めでたくも、ふたたび古本屋の灯が点りました。ゆうらん古書店の開店初日に真っ先に駆けつけたのは、J・J氏(のオバケ)だったのではないかと思われます。
元に戻って五反田古書展。
「黒沢書店」はいつも廉価の大放出。各種チラシなど紙モノの出品も大量で、痛快な発見も再三。
五反田古書展に行けば、先ずは黒沢書店の棚を目指すほどでした。
2017年3月が最後の参加だったようです。
もともと、店舗販売を行なわない事務所のみのお店でしたが、その後、即売展や古本まつりへの参加はないようで、現在の営業状況については定かではありません。
なお五反田古書展は、2019年までは6月と12月の年2回開催でしたが、2020年からは12月の年1回です。
〈参照日記〉
即売展の参加店について、既に同じようなことを書いていますが……
→【2011年6月24日/2023年4月追記】書窓展と五反田古書展