【2012年11月11日】
八王子散歩。
先ず佐藤書房、それからまつおか書房、時間があればブックオフと巡回するのがいつもの順路だが、たまには逆まわりに歩く。
ブックオフ八王子駅北口店、『ニューヨーク編集者物語』ドナルド・E・ウェストレイク(扶桑社ミステリー/1989)、『読書の時間よ、芝村くん!2』西村悠(一迅社文庫/2009)、105円の文庫本を2冊。
まつおか書房、店頭の均一棚から『夕御飯はイタリア料理』海鋒勇(中公文庫ビジュアル版/1995)100円。文庫専門だった2号店は、硬い本を整然と揃えた棚に変貌していた。
佐藤書房、大庭柯公『露国及び露人研究』(中公文庫/昭和59)が2冊あり、片方は美本で1470円、もう一方は〈1ページ折れ〉の注意書きがあり735円。ほんの1ページの瑕とはいえ、それを価格に反映してくださるのは爽やかだ。しかも半額だ。有難く〈折れ〉のほうを選ぶ。
南陀楼綾繁『路上派遊書日記』(右文書院/2006)840円と、『ラノベ部』平坂読(MF文庫/2008)105円、追加して計3冊。
久しぶりに国立も歩き、ブックオフ国立駅南口店では『名前のつけかた』の在庫の有無を店員さんに尋ねている若夫婦の姿が妙に印象に残ったりもしたのだが、みちくさ書店ともども、購入なしに終わる。
みちくさ書店は入口左側の書棚が取り払われて眼鏡を売っていた。読書に眼鏡はつきものなのかもしれないが何故に眼鏡か、本よりも眼鏡のほうが売れるのだろうか。
【2025年2月追記】八王子と国立の駅周辺の古本屋・2025年版
「ブックオフ八王子駅北口店」は八王子駅と京王八王子駅を結ぶ目抜きの通りに面していますから、いつも賑わいます。
しばらく間を置いて訪れるたびに、本以外の品物の比率が増大してゆくようでもありますが、それでも本はたくさんあります。
あまり時間のないときなど5分だけのつもりで入店し、入ったらもう駄目で20分、30分。ブックオフにかぎらず、すべての古本屋において「5分だけ」が成功した例はありません。
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「まつおか書房」はその後(2019年?)、京王八王子駅近くの明神町へ移転しています。
旧店舗の最寄りは八王子駅。佐藤書房から程近い繁華街の裏手に、路地をはさんで1号店と2号店が向かい合っていました。
1号店の外壁一面の文庫棚、2号店の店先にあふれる均一箱。路地裏の古本名所でありました。
一足先に閉店した2号店の跡地には重厚な店構えのバーが出来上がり、ここに古本屋があったことなど夢だったかのように風景は一変します。1号店のほうは閉店後しばらくは店舗跡がそのまま残っていましたが、やがて更地になり、地図を見ると現在は駐車場に変貌したようです。
さらに一時期までは、4階建ての倉庫を開放した3号店が、1・2号店からは離れた場所で営業していましたが、既に(2012年頃?)閉店しています。
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「佐藤書房」は中央線沿線に点在する古本屋さんのなかでも屈指の人気店と言えるでしょう。
店内の狭小な通路で、行く手にお客さん、戻ろうとするとお客さん、前後を塞がれてその場で立ち往生なんていうこともしばしばです。
ひとたび訪れるや虜となり、二度三度と通い続けたくなること請け合いです。
都心からは少々遠くなりますが、その距離をものともせずに特別快速に乗り込んで、定期的に巡回する御常連は多いはずです。
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2017年3月には「古書むしくい堂」が開店しています。
八王子駅前からの西放射線ユーロードを端まで進み、突き当たりの交差点を折り返すような恰好で右折。甲州街道に面して店舗があります。佐藤書房からは5分ほどです。
店頭の均一棚は本の量が多く、さっそく見どころがあります。
何かの行き帰りのついでに、取敢えず店頭棚だけ見て行くご近所さんもいるでしょう。
店内の棚は整頓が行き届いており、どちらかと言うと刊行年の新しい本を中心に構成されているようですから、佐藤書房の棚との対比の妙も愉しめます。
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西放射線ユーロードにて毎年5月と10月に開催されるのが「八王子古本まつり」です。
歩道に沿って古本テントがまっすぐ並びます。
古本まつりに合わせて、佐藤書房、むしくい堂、まつおか書房と歩きまわれば、半日くらいはあっという間に過ぎてしまうでしょう。
そうなると、どうしてもブックオフは後まわしということになりますが、最後に5分だけのつもりで入店し、結果がどうなるのかは前述のとおりです。
なお2022年と23年には、八王子駅前の商業施設オクトーレでも「八王子オクトーレ古本まつり」が開催されました。第3回を数えたところで一段落したようで、2024年は開催されていません。
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続いて国立の「ブックオフ国立駅南口店」は、駅南口から斜め右に延びる富士見通り沿いにあります。
店舗は2階建てですが、店内は割合にこぢんまりとしています。
昨今は大型店舗が趨勢のブックオフのなかにあって、こういう言い方が合っているのかどうか、昔ながらのブックオフと言えそうです。
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「みちくさ書店」は現在、国立デパートの1階で営業しています。
駅南口からは1、2分。ファミリーマートの角をひとつ横丁に入ってすぐ左手です。
以前は駅前バスロータリーに面して、半露店のような店舗が独特でした。
新店舗への移転は2020年5月。
普段思い込んでいるデパートの概念を揺さぶるような国立デパート。訪れる価値はあります。
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駅前から、今度は斜め左に延びる旭通りを200メートルほど進むと、右手に「三日月書店」があります。
洋書が多く、それも中東諸国の文献を取り揃えるという異色の棚が展開します。
もちろん日本語の本もあり、100円均一の本もありますから、アラビア語やペルシャ語を読めないからと言って尻込みするには及びません。
小さな店内で、世界混在の豊潤なめまいを体験できます。
そしてこの店舗こそ、稀代の名店「谷川書店」の店舗跡を受け継いだ記念の地です。
谷川書店の閉店は2014年2月。それからおよそ7年という長い空白を経て、2021年7月に三日月書店が開店しました。
古本屋から古本屋へ、オールドファンならずとも、この継承譚に胸を熱くするでしょう。
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旭通りをさらに進むと左手に「ユマニテ書店」です。
店構えも、店内も、余すところなく昔ながらの町の古本屋さんです。
一歩足を踏み入れれば、店内の時間の質が外界とは明らかに異なることに気づきます。
ゆっくりなのではなく、止まっているのではないかとさえ思われます。
他にお客さんの姿が見えないときなど、その静けさに緊張してしまいますが、今まさにすべての背景は消え去って古本のみと向き合っているのだと、強烈に。
〈関連日記〉
*八王子の古本屋
→【2010年10月12日/2023年1月追記】佐藤書房にて『夢野久作の日記』
*みちくさ書店
→【2010年12月7日/2023年2月追記】国立・みちくさ書店『あめりか写真紀行』