【2012年2月8日/2023年8月追記】リブロ池袋本店春の古本まつり

【2012年2月8日】

「リブロ池袋本店春の古本まつり」チラシ
《リブロ池袋本店春の古本まつり》チラシ/2012年

リブロ池袋本店、春の古本まつり。
開場10時、にわとり文庫の棚へ赴くと、筋金入りの愛書家たちに囲まれて、探偵物や空想科学物を取り揃えた書架は早くも隙間だらけ。
一方、その他の雑本を並べた棚は辺境のように手付かずのままだ。いちばん下の隅っこにはユウモア全集が3冊ばかり、日陰に咲く花のように身を寄せ合っている。藤倉修一『マイク余談』と石黒敬七『空気投』をまず手にとる。しゃがみこんで、脚、脚、脚を掻き分けるようにして床に置いた箱の中から、あまとりあ社の福田英一と狭山温。以上の4冊が、にわとり文庫。
ざあっと会場全体をひとめぐりして、それから一店一店、参加20余店の棚を順々に辿る。
何か返却されているかもしれないので、時折、にわとり文庫の棚を往復する。
古書ふみくらより新詩叢書の中山省三郎『豹紋蝶』(湯川弘文堂/昭和19)1000円。
山本書店では寺山修司『棺桶島を記述する試み』(サンリオ出版/昭和48)1575円、この値段での出品は有難い。
終盤、かぴぱら堂の棚に『馬淵美意子のすべて』(求龍堂/昭和46)を見つけてしまった。枡形の大判、堅牢な二重函。置き場所に困惑するのは必定だが、しかし見つけた以上は買わないわけにはゆかぬだろう。価格3500円。
ふと思案して、にわとり文庫で確保した4冊をすべて元に戻す。駆けつけ早々の努力はこれで水の泡ということになるのだが、これはこれでひとつの道程なのだろう。

中山省三郎詩集「豹紋蝶」表紙
『豹紋蝶』中山省三郎詩集

高円寺の喫茶ネルケンに落ち着いて、『馬淵美意子のすべて』をよいしょと取り出す。
函をあけると本体の表紙には布地が貼り込んであり、それは著者遺愛の着物の切れを使用したということなのだが、焦茶色の格子縞が時を隔ててもなお艶めかしく、指が触れると、静謐の奥から何かが乗り移ってきそうな迫力があった。
荻窪のささま書店を巡回して、今日は買物なし。
最後は、久しぶりに武蔵小金井の伊東書房。京都国立近代美術館の図録『小牧源太郎遺作展』(京都新聞社/1996)800円を買う。

「小牧源太郎遺作展」図録表紙
『小牧源太郎遺作展』図録(京都新聞社/1996)

【2023年8月追記】
リブロ池袋本店の古本まつりは、その後、三省堂書店へと主催が代わり現在も継続しています。
春と夏の年2回。会場はリブロ時代と同じく西武池袋本店別館2階の西武ギャラリー。
「三省堂書店池袋本店古本まつり」としては、2023年8月で第16回となります。

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  ◇
あれだけ大判の『馬淵美意子のすべて』さえ、今やどこかに埋もれています。
この日の5か月前には『馬淵美意子詩集』を買っているのですが、その詩集も合わせて今は消息不明ということであれば、詩人に合わせる顔もありません。
購入した本が悉く死蔵と化すようでは、今さら何かを語るのはおこがましく、それにもかかわらず、何かを語りたくなってしまうという古本の魅力あるいは魔力に、どうしても抗えません。
(積み上げるには非常に適した形状の)書物とはそういう宿命を背負うのではないでしょうか、と、古本の神様に小さな声で申し開きをしてみるのですが……

  ◇
武蔵小金井北口駅前の「伊東書房」は、2013年11月に店売りを終了し、通販営業に移行しました。
駅から至近。専門は理工系学術書、歴史、美術などでしたが、専門外の本については格安で放出されることも多く、その廉価本のワゴンを目当てに、訪れるのが楽しみなお店でした。
最近の状況は分かりませんが、2年ほど前に通りかかった際には、店舗や看板など、当時のままに残っていました。