【2012年8月24日・25日/2024年5月追記】連日の炎天下の古本

【2012年8月24日】
東京古書会館の書窓展。
あきつ書店の棚にて、
①『街頭連絡・医者と坊主』北村小松(アトリヱ社=現代ユーモア小説全集第四巻/昭和10)函付900円。
アトリヱ社版ユーモア小説全集の北村小松篇。
先制ホームランと言いたいような収穫だが、諸氏を出し抜いての手柄というわけではなく、誰も手を伸ばさなかったので何となく手中に転がりこんできた。装幀と挿絵は近藤日出造が担当。
②『生活余白』武野藤介(八洲書房/昭和14)500円。
他にも何冊か武野藤介のコント集が並んでいたが、これは随筆集。
③『風景画の描き方』鍋井克之(崇文堂出版部/昭和15)300円。
④『建築の学と芸』伊東忠太(三笠書房=現代叢書/昭和17)300円。
忠太博士の著作、先月の趣味展では『琉球』が泳ぐ魚のようにするりと眼前を逃げ去ったのだったが今日はしっかりと摑む。摑んだことは摑んだけれど、内容は題名から察せられるとおり研究論文の集成で、漫画に関する記述は見当たらない。多分、読まないだろうな。
以上、今回の書窓展での買物はあきつ書店のみ。

北村小松「街頭連絡・医者と坊主」外函
『街頭連絡・医者と坊主』北村小松
(アトリヱ社=現代ユーモア小説全集第四巻/昭和10)外函

古書店街は三茶書房から日本特価書籍まで、店頭ぶらぶら。途中、ミロンガで小休止。
折り返して、御茶ノ水駅に向かいながら、虔十書林の店頭を覗く。
炎天下の書架に陽炎となって揺れていたのは北村兼子『怪貞操』(改善社/昭和2/3版)。函欠の裸本で、背表紙の上半分は剝れかかっている。これが500円以下なら迷いはないが、売価は1000円。微妙な陽炎だ。
しかし初めて遭遇する書物である。しかし……いちど見たとなると続々と現われたりするのが古本のあやかし・・・・ではなかったか? 次は函付で、しかも800円くらいで、来週あたり、さっそくやって来るのでは……。
だがこれも、ひとつの白昼夢なんだろう、購入する。

北村兼子「怪貞操」表紙
『怪貞操』北村兼子(改善社/昭和2/3版)

【2012年8月25日】
西部古書会館、好書会。
今日も残暑は厳しく、この暑さで倒れぬよう配慮してくれたのか、定刻15分前の9時45分には室内も開場となる。有難い。
真夏の即売展のガレージ会場は、かなり過酷な条件を備えていると思うのだが、熱中症に罹ったり貧血を起こしたり、急病人の発生する場面に出くわしたことはない。
ご常連の皆様を見渡すに、屈強な肉体派はほとんど見られないし、年齢層からすると、おそらく全員が何かしらの持病を抱えているのではないかと察するのだが、やはり朝一番で古書会館に駆けつけるほどの人種にとっては、何はなくとも古本こそが万能薬なんだろう。
『日本の酒』山本祥一郎(土屋書店/昭和51)150円。
『居酒屋礼讃』森下賢一(ちくま文庫/2008)210円。
『0随筆』岡部寛之(四季新書/昭和31)210円。
『アジサイ』山本武臣(ニュー・サイエンス社=グリーンブックス/昭和54)300円。
『東京24時間』(河出書房=河出新書写真篇/昭和31/6版)210円。
廉価本を5冊ほど拾い集めて11時。

岡部寛之「0随筆」表紙
『0随筆』岡部寛之(四季新書/昭和31)

高円寺ガード下の都丸支店の店頭棚をザッと眺めてネルケンで珈琲。
午後はまず中野に移動してブロードウェイを巡回。
まんだらけの『小さいお嫁さん』(宝文館少年少女ユーモア文庫)は、いつか買おう、そろそろ買おうと思いながらぐずぐずしながら、やっぱり愛想を尽かされてしまったようで、何処かへお嫁に行ってしまっていた。
地下鉄を乗り継いで都心を横切り月島へ。あいおい古本まつり。
『ナポリタン!』上野玲(扶桑社/2004)300円。
『世界のお弁当』服部直美(情報センター出版局/2008)500円。
『ブックハンターの冒険』牧眞司(学陽書房/2000)450円。
割合に最近の本を3冊。ナポリタンとかお弁当に手が伸びるということは、そろそろ腹が減っているのだろう。
ふたたび地下鉄で都心を横切り、溝ノ口の旧友の家を訪問し、何はなくとも缶ビールなのだ。
ぷはーッ。

〈第4回あいおい古本まつり〉チラシ
《あいおい古本まつり》第4回/チラシ

【2024年5月追記】
『怪貞操』を買い求めた「虔十書林」ですが、当時の店舗は駿河台下交差点の北側の、三角地帯に面した角地にありました。
ロシア料理店、サラファンの向かいあたりです。
古書店街の周縁部というような立地で、表通りとは一味違った古本風景を見せてくれていましたが、2019年2月に旧店舗は閉店となり、翌3月、より繁華な神田すずらん通りへと移転しました。
湘南堂書店の隣り、元は風月洞書店(2018年12月閉店)があった場所で、現在も盛業中です。
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『怪貞操』の著者、北村兼子については下記ご参照ください。

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月島の「あいおい古本まつり」については下記ご参照ください。
2011年12年、好書会からあいおい古本まつりへと、2年続けて同じ足取りで歩いています。
代わり映えのない歩き方ですが、古本軌道に沿って歩くと自然とそうなります。
しかし道程は同じでも、並んでいる本は違いますから、同じ道でも違う道です。