【2011年11月21日/2023年6月追記】梅ヶ丘から豪徳寺

【2011年11月21日】
梅ヶ丘。
お寿司を食べて夕方6時には満腹となり、そのあとは腹ごなしの古本歩き。
梅ヶ丘南口駅前にあるはずの高千穂書房はすでに消滅している模様。
続いてのツヅキ堂書店梅ヶ丘店は営業していた。小田急線沿線に何軒かある支店のひとつで、以前、登戸店では『早稲田古本屋日録』を買った。そのとき貰った十円券は記念として手帖に貼りつけてある。梅ヶ丘店では買物ナシに終わる。
南に進んで、すやま書店。シャッターが鎖されていて営業はしておらず、店先には空っぽの均一棚がふたつ。たまたま今日はオヤスミだったのか、それともその棚は往時の遺跡なのか、判明せぬまま歩を進める。
街灯の少ない住宅地をひっそりと通り抜けて豪徳寺。
うっかり店の前を通り過ぎて、もと来た道を慎重に引き返して靖文堂書店を探し当てる。残念、オヤスミだ。
恰度そこへ、駅のほうから歩いてきた御老人が、背中を丸めながら入口の鍵を開けて店内に入ってゆく。南部古書会館の即売展で、いつも気焔をあげておられる御主人ではないだろうか。声を聞けばたちまち判然とするはずなのだが、横顔だけではちょっと判らない。
駅前へと進み、その手前の細道を右に曲がると玄華書房の電気看板が、横丁の暗闇に白く浮かび上がる。よい風情なり。ひとつ曲がった先という立地が、とても効いている。
建築関連の書籍や雑誌が充実しているほか、展覧会の図録も揃っている。
駅弁掛紙展の図録『ノスタルジア・駅弁掛け紙コレクション』北区飛鳥山博物館編(北区教育委員会/2011)800円を発見したのだが、つい半年前、今年の春に開催していたとはまったく知らなかった。
もう1冊、『植民地時代の古本屋たち』沖田信悦(寿郎社/2007)1200円。版元の寿郎社は札幌の出版社。
無事に古本も買えたし、食後の散歩はこのあたりで終わりにして、世田谷線にごとごと揺られて帰途に就く。

北区飛鳥山博物館「ノスタルジア・駅弁掛紙コレクション」表紙
『ノスタルジア・駅弁掛け紙コレクション』北区飛鳥山博物館編
(北区教育委員会/2011)
沖田信悦「植民地時代の古本屋たち」表紙
『植民地時代の古本屋たち』沖田信悦
(寿郎社/2007)

【2023年6月追記】探訪の古本屋その後
2011年当時、10年前の『全国古本屋地図』2000年版(日本古書通信社/1999)を頼りに古本屋めぐりをしていましたので、訪れてみると跡形もない、というのはたびたびでした。
梅ヶ丘の「高千穂書房」の閉店時期は不詳です。
書棚のみが店先に取り残されていた「すやま書店」は、後日の再訪を果たさぬままに終わりました。
2010年発行の『古本屋名簿―古通手帖2011』(日本古書通信社)をその後入手したのですが、すやま書店は掲載されているものの「買い入れ専門、店売りなし」と記してあります。
2011年はすでに事務所営業に移行していたようです。
以降の消息は判然としませんが、現在も「日本の古本屋/古本屋を探す」で検索しますと、当時の所在地で登録されています。ただし詳しい記載がなく、最新の情報なのかどうか、やはり判然としません。
「ツヅキ堂書店梅ヶ丘店」も、時期は不詳ですがすでに閉店しています。
結果から言うと、この日いちどきり、最初で最後の探訪でした。そうとなるならば、せめて文庫本1冊、どうして買っておかなかったのかと、素っ気ない探訪が悔やまれますがもう間に合いません。
小田急線沿線に支店が点在していたツヅキ堂書店ですが、全店閉店しています。

〈関連日記〉ツヅキ堂書店登戸店
【2011年5月22日/2023年3月追記】町田と登戸
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豪徳寺の「靖文堂書店」は2022年2月に閉店となりました。
年代の古い古書や絶版文庫を取り揃え、しかも軒並み廉価という魅力的なお店でした。
店舗は閉じましたが、経堂へ移って事務所営業を継続しています。
南部古書会館の即売展にも引き続き参加しておられ、五反田遊古会など会場の一角で、飾らぬ価格の廉売棚は健在です。
玄華書房、日記には玄華書房と記していますが、正しくは「玄華堂」です。
現在も営業しています。
店先の看板には玄華書房、軒の庇には玄華堂と表示してあり、少々混乱を招きますが、1994年刊の『【新版】古書店地図帖』(図書新聞)には、玄華書房の名で載っています。
おそらく旧表記は「書房」で、看板は当初の名残をとどめているということなのでしょう。
豪徳寺駅前の商店街から、自動車の入れない路地に曲がると店舗があります。この先に古本があるのかと、初めてのときはもちろん、角を曲がるたびにわくわくする瞬間です。
店内には、建築や美術のほかに人文書などが整然と並び、狭い路地裏から一転して、また別の世界が広がります。