【2012年3月2日】
西部古書会館、西部展。
雄峰堂書店が出品する幼虫図鑑は今迄に何度かこの西部会館の即売展で見かけていて、カバーガールとは言わないと思うのだが、表紙に抜擢された揚羽蝶の幼虫の姿態に魅かれながらも、価格1000円に躊躇していた。ずっと買い手がつかない様子だったから、どうやら見切り品となったようで、今日はついに半額に値下げされていた。『幼虫』素木得一監修(北隆館原色図鑑ライブラリー/昭和38/6版)525円、小冊子『新潮社八十年小史』百目鬼恭三郎(新潮社/昭和51)150円と合わせて購入する。
西部展のあとは東京古書会館に直行して次は紙魚之会。『顕微鏡下の世界』竹村嘉夫(カラーブックス/昭和54)100円、1冊のみ購入。
1階の受付で弥生美術館〈日本のkawaii〉展のチラシを眺めていると、そこへ紙包みを携えた髭紳士がやって来て、「神奈川の目録だよ」と言いながら包みを解き、刷り上がったばかりの『フジサワ湘南・古書まつり(第15回)』目録を一部くださる。うれしいお土産になった。
昼前から雨が降り始めて、古書店街の店頭棚はどこもオヤスミ。
九段下まで靖国通りをまっすぐ歩いて地下鉄に乗る。今日の神保町は目録を貰いに行っただけのようなものだな。
高田馬場、BIGBOXの古書感謝市。
屋根の下ではあるのだが、玄関先の会場は北風の吹きさらし、たいへん冷える。
隣りに立っていた小父さんが「寒い、もう駄目だ、帰ったほうがいいよ」と、私に忠告するような独り言を残して去ってゆく。
その暗示に掛かったわけではあるまいが、何も買わずに退散する。
西武線で新宿に出て、地下街サブナードの古本浪漫洲。『スターン氏のはかない抵抗』ブルース・J・フリードマン(白水uブックス/昭和59)100円。
古本伝いにくるりとまわって高円寺へと戻る。
ガード下の四文屋に落ち着いて、焼酎梅割りと煮込みと古書目録。
会場で貰った紙魚之会目録『古書即売展』には長谷川春子『戯画漫文』(昭和12)が載っていて4万5000円だ。
さて、私のあとに入店して、席に着くなりレバ刺し3人前を注文した紳士は、紳士のようでいてじつは淑女であるところの紳士のようで、たぶん紳士と呼んでは失礼なんだろう。そのレバ刺し3人前をあっというまに平らげた隣人が会計をしようと席を立った際の出来事なのだが、床に落としたハンカチを拾ってあげたら目を潤ませながら「ありがとう、ありがとう」と何遍も言い、さらに一歩、ぐっとこちらに近づいて「きれいな顔しているわね」とささやかれたときには、どうやって返事をしてよいのか混乱して、香水の芳香にくらくらしながら、とりあえず曖昧に笑ってみた。
【2023年9月追記】
『幼虫』を出品していた「雄峰堂書店」は三鷹駅北口の古本屋さんです。
残念ながら私は、三鷹の店舗は訪れたことがありません。
その以前は、京王線府中駅の近くで営業しており、そちらの店舗は、もうずいぶん昔ですが訪れた覚えがあります。線路に並行して延びる商店街(歓楽街?)の入口にあったのではなかったか、と。
即売展などの催事でも活躍されていたベテランでしたが、その後閉店となりました。
閉店の正確な時期は把握できておりませんが、『東京古書組合百年史』の「過去在籍者名簿」によりますと、雄峰堂書店は2014年に組合を脱退されています。おそらく閉店の時期と重なっているのだと思われます。
(参考*『東京古書組合百年史』/東京都古書籍商業協同組合/2021)
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西部会館の「西部展」、東京会館の「紙魚之会」、新宿サブナードの「古本浪漫洲」、これらは現在も継続して開催されます。
高田馬場の「古書感謝市」は2013年で終了となりました。
また有隣堂藤沢店6階が会場の「フジサワ湘南古書まつり」は、2022年は開催されましたが(第24回)、2023年は開かれていません。同じ有隣堂の4階では「フジサワ古書フェア」が年4回行なわれます。
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「ガード下四文屋」は2021年頃(詳細時期不詳)に閉店となってしまいました。
日記にはレバ刺しが登場していますが、この日から約4か月後の2012年7月1日より、全国的にレバ刺しは提供禁止となります。
蛇足。言わずもがなですが、私はきれいな顔ではありません。
〈参照記事〉
高田馬場BIGBOX古書感謝市
→【2009年11月15日/2022年11月追記】高田馬場・BIGBOX古書感謝市を初探訪
フジサワ湘南古書まつり/フジサワ古書フェア
→【古本まつり】かけあしガイド(神奈川・埼玉・千葉)